推し活で直面する権利の疑問について考えてみたよ
権利って難しい
推しに関係する権利といっても本当にたくさんあります。ここでは主に著作権について考えます。著作権といえば、無断転載やめよう!という言葉をよくみかけるかもしれませんが、その言葉だけで正しく転載について理解することは、とても難しいことです。
・雑誌の誌面をスキャンして載せはしないけど、雑誌の表紙の写真をSNSにあげるのはどうなんだろう?
・公共機関に貼りだされたポスターを自分で撮影してSNSに載せることはどうなんだろう?
・公式のアクスタの写真をSNSに載せるのはどうなんだろう?
そもそもどんな権利があって何が守られるべきなんだろう?
そのような疑問に自分で答えが出せるように、過度に無実の方々を取り締まってしまわないように、基本的な考え方と応用した考え方の助けになる知識をここに記しておきます。
私は弁護士などの権利を扱う専門の職種についているわけではありませんので、何か考慮に欠ける点があれば根拠と共にご指摘いただけると嬉しいです。
著作権って何?
著作権とは、”人の創作のための努力と能力に与えられるべき称賛と報酬を正しくうける権利“だと考えます。
著作権法では自分の気持ちを作品として表現した時に生まれた物を『著作物』、それを表現した人が『著作者』と定義されています。著作物が他人に勝手にコピーされるならば、著作者へ与えられるべき称賛や報酬が、そのコピーしただけの他人に与えられてしまうかもしれません。その権利を守り、文化が発展するように、と制定されているのが著作権法です。称賛と報酬が正しく著作者に与えられれば、著作者はまた新しい創作へ取り組むことができます。
以下基本的な知識を並べていきますが、応用編まで読み飛ばしたい方は目次にてお好きな項目ご確認ください。基本編を読み飛ばしても理解できるようには記載しております。全部で15000字ほどの文章です。
基本編
著作物には何が含まれるか
小説、脚本、論文など。
このブログの文章も私の言葉の工夫を凝らして制作しておりますので著作物に含まれます。
曲と歌詞のどちらも著作物に含まれます。
振り付けや動作によって表現される物も著作物に含まれます。
形や色によって表現されるアートを指します。舞台装置なども含まれます。
人や風景などを撮影した物。構図や色味などの創作性が保護されます。レントゲン写真など、そこに創作性が無い物に関しては著作権は適用されません。
映画、テレビ、動画配信サイトで公開されている物が含まれます。防犯カメラなど、そこに創作性が無いものに関しては著作権は適用されません。
アイドル関連のみ記載しましたが他にも建築、地図、図面、プログラム、 翻訳も著作物として扱われます。
著作権に含まれる権利の内容
著作権には大きく二つの権利が含まれています。
『著作者人格権』と『財産権』です。
『著作者人格権』とは、”著作者が精神的に傷つけられたりすることのないよう感情を守る権利“だと考えます。
『財産権』とは、”著作物による利益を著作者が得る権利“だと考えます。この権利は譲渡することが可能なので、著作者(制作した人)と、著作権者(利益を得る権利を持つ人)が異なる場合があります。
ではそれぞれの権利に含まれる具体的な内容を記します。
著作者人格権に含まれる権利
公表権
著作者は、その著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、又は提示する権利を有する。
著作権法 第18条
つまり著作者には”自分の創作した物を自分で公表する権利“があります。
言い換えれば、著作者以外は公表されていない物を公表する権利はありません。
“早バレ”と言われる公式が意図した公表タイミングより先に公表することは、この公表権を侵害しているよ。
氏名表示権
著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。
著作権法 第19条
つまり著作者には”著作物を公表する時に名前を表示するかしないか、表示するなら本名かペンネームか、を選ぶ権利“があります。
向井くんが撮った写真を雑誌に掲載するにあたり、写真の近くに©️Photo Boy と記載していますが、向井くん以外の人は向井くんの撮った写真に別の著作名を記載する権利はありません。
©️はコピーライトマークと呼ばれていて著作物の権利が誰にあるかを表示するときに用います。著作権は作成したときに自動的に発生するためコピーライトマークの有無は権利の有無に関係しません。
同一性保持権
著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
著作権法 第20条
つまり著作者には”著作物を勝手に切ったり繋げたりして改変されない権利“があります。著作者以外は動画の編集、写真の切り取り、写真の加工をする権利はありません。
YouTubeやX(旧Twitter)に自分好みのシーンだけを切り取って編集した動画を載せるることや、推しの画像で別の画像を作成することは、同一性保持権を侵害している行為です。
財産権に含まれる権利の内容
複製権
著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
著作権法 第21条
つまり著作者には”著作物をコピーする権利” があります。全ての著作物が対象の最も基本的な権利です。
著作者以外はどんな形の著作物であれ無断でコピーすることを許されていません。
ネット上の画像を保存することや、動画をダウンロードすることも複製に含まれます。複製することにより”元の著作物と著作者が与えられるべき称賛と利益を奪うことがないよう“に定められています。
複製とは著作権法によりこのように定義されています。
印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること
著作権法第2条15
また過去の判例ではこのように定義されています。
著作物の再製は,当該著作物に依拠して,その表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成することを意味するものと解され
平成23年5月20日 東京地方裁判所
…
つまり”表現上の本質的な特徴が同一“である場合を複製と定義しています。
音楽が収録されたCDがあり、そのCDをコピー機でコピーしてCDの姿形が印刷された紙を作ったからといってこの行為はCDの複製にはなりません。CDの本質は”音楽”であり、その形ではないからです。
しかしこのCDに印刷されているデザインをコピーして別のCDに印刷するならば、”デザイン”の複製となります。デザインの本質を複製したからです。
複製について許可されている範囲もあります。後ほど記載する私的利用のための複製をご覧ください。
公衆送信権
著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
著作権法 第23条
つまり著作者には”著作物をたくさんの人に向けて見せる権利“があります。逆に言えば他人の著作物をたくさんの人に公開することは許されていません。テレビやラジオの送信に関わることは少ないかもしれませんが、インターネットであれば誰もが送信することができます。ということはインターネットに他人の著作物を無断で載せることは許されていないということです。もちろん著作権者が許可している場合を除きます。
他人の著作物をインターネットに載せる人はたくさん見かけるし、”許されていないこと”という実感が難しいよね
家や学校など限られた空間においては公衆の送信の対象とはなりません。メールやLINEなどで、知人に対して他人の著作物を送ることは問題になりません。しかし不特定多数の人に向けて配布を呼びかける場合は、一人ずつに動画や画像等を送信したとしても公衆送信権の侵害となります。
その他、上演権・演奏権(第22条)、口述権(第24条)、展示権(第25条)、頒布権(第26条)、譲渡権(第26条の2)、貸与権(第26条の3)、翻訳権(第27条)、二次的著作物の利用に関する元著作者の権利(第28条)などがあります。
今回は直接関係するところではないので省略しましたがもし気になるようでしたら調べてみてください。
著作物を自由に使える場合
ある条件下では自由に著作物を利用できる場合があります。この許可されている行為を知ることで、権利を侵害せずに許可の範囲内で楽しむことができます。
私的利用のための複製
著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
著作権法 第30条
つまり”個人的な範囲内なら複製しても良い“と定められています。複製した物を他人に公開してしまうと権利を侵害する可能性がありますが、公開することなく自分と自分の家族内など、限られた範囲で楽しむ分には権利の侵害とはなりません。
公式画像(著作物)を保存し携帯の待ち受けにする。動画を見返すためにカメラロールに保存する。などはこの私的利用の複製にあたり問題になりません。
場合によっては保存も著作権者が禁止する場合があるので公式の規約を充分に確認してください。
付随対象著作物の利用(写り込み)
写真の撮影、録音又は録画(以下この項において「写真の撮影等」という。)の方法によつて著作物を創作するに当たつて、当該著作物(以下この条において「写真等著作物」という。)に係る写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等著作物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該創作に伴つて複製することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
著作権法 第30条の2
つまり写真を撮る際や動画を撮る際に”目的とする対象以外の著作物が入り込むことがどうしても回避できない場合“は利益を奪わない限りは権利侵害とはなりません。
テレビを見ている家族のリアクションを撮影した動画など、目的がテレビの内容よりも家族を撮影することにあり、画面の占める割合においてもテレビ画面が全てではない場合、付随対象と見られ権利侵害とならない場合があります。しかしテレビを枠内いっぱいに写し、目的がテレビ番組の複製である場合は権利侵害となります。
引用
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
著作権法 第32条
“画像や文章が自分の論じることに必要な資料である場合“引用元をしっかり記載しつつそれを無断においても利用することができます。
AERAなどを発行している朝日新聞出版の公式サイトにはこのような記載があります。
1.質的にも量的にも、引用する側の本文が「主」、引用部分が「従」という関係にあること。本文に表現したい内容がしっかりとあって、その中に、説明や補強材料として必要な他の著作物を引いてくる、というのが引用です。本文の内容が主体であり、引用された部分はそれと関連性があるものの付随的であるという、質的な意味での主従関係がなければなりません。量的にも、引用部分の方が本文より短いことが必要です。例えば、「AERA dot.に次のような記事があった」と書いて、あとはその記事を丸写しにしたものや、記事にごく短いコメントをつけただけのものは引用とはいえません。
2.引用部分がはっきり区分されていること。引用部分をカギかっこでくくるなど、本文と引用部分が明らかに区別できることが必要です。
さらに、「出所の明示」も必要です。通常は引用部分の著作者名と著作物名を挙げておかなければなりません。AERA dot. の場合は、「AERA dot. より」といった表示が必要になります。
朝日新聞出版 著作権について のページより
現在私が公式サイトの文章を載せている行為もこの”引用”という許可された行為です。論じている内容に必要な資料であるかどうか、その割合は適切か、引用元がはっきりと分かるか、著作者の利益を奪う物ではないか、引用部分は改変されていないか、ということが判断に必要な要素となります。
“ダンスの解説動画”などはSnow Manの公式動画を動画内で再生していたとしても、解説や感想などを展開していて、動画の必要な資料として扱っているのでこちらの”引用”が適用されて、権利侵害とはならない可能性が高いでしょう。
聴覚障害者等のための複製等
聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。
著作権法 第37条の2
特定の許可されている事業者においては著作者に無断で障害の持つ方に対して複製が可能としています。ただし“許可されている事業者”のみです。聴覚障害者のためであったとしても、”ファンの無断の文字起こしや字幕付け”も著作権者の許可なく無断で公表することは厳密には権利侵害となります。YouTube動画の字幕も承認を受ける必要があります。
『Amara』を利用してYouTubeに字幕をつけるしかし、友人のために文字起こししたものを、個人的に送信することは問題になりません。文字起こしや字幕が多くの人のために必要な場合は、権利侵害とならないよう公式で対処してもらうよう要望を出すことが最善かもしれません。Snow Manは今までのリリースCD・DVD共に全編バリアフリー日本語字幕がついています。他のアーティストにも是非広まって欲しいと思います。
営利を目的としない上演等
公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。
著作権法 第38条
つまり友人同士無償で行う”観賞会“は権利侵害とはなりません。 営利を目的としていないという点においてはSNSやブログも許可の対象となるかのように感じますが、インターネットにアップロードした時点で”公衆送信権”の侵害となりますので許可されてはいません。
公開の美術の著作物等の利用
美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
著作権法 第46条
二 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合
公園にある彫刻などの美術品は自由に写真に撮ったりしても権利侵害となりません。野外に常に設置されている物が対象になります。公共の場所に貼られているポスターや広告も公開美術として扱われるのではないか、と考えますが、明言はされていません。屋内については対象外になります。ポスターや広告の撮影については応用編で個別に論じます。
その他いくつか関係しないところについては省略いたしましたので著作物を自由に使える状況については著作権法第30条〜47条をご覧ください。
応用編
ここからは行為別にどのような権利に当てはまるか考えます。著作権はあくまで“親告罪”であり、著作権者が罪に問うか問わないかの権利を持っています。ここでは私が著作権法と照らし合わせて考えていますが、もちろん違った解釈をすることもできます。人によってどの法律が当てはまるかの考えは違ってきます。そのために裁判所があるのです。罪となるかどうかは著作権者と裁判所次第なので、ぜひご自分で権利侵害とならない根拠を考えて、ご自分の行動を決定するための参考としていただければと思います。
雑誌の表紙を撮影してSNSに載せる
表紙を撮影してトリミングして、綺麗な画像としてSNSに載せる行為は”複製権“と”公衆送信権“の侵害となります。
しかし、表紙の撮影の仕方によって本質が変化します。
自宅の床や机を含めて「購入しました!」という意図をもって撮影をする場合はどうでしょうか。この場合雑誌を手に入れたことが表現の本質であり、表紙を撮影して複製することにはありません。購入報告のため撮影することは、罪に問われる可能性は低いと考えます。
出版社により扱いが変わってきますので出版社ごとに調べてみても良いかもしれません。出版社に個別に許可をもらうこともできます。そこまで配慮するのが面倒だと思えば、通販サイトなどのリンクを共有することで購入した、ということを表現するのも良いかもしれません。
どちらにしろ、罪に問うことができるのは著作権者のみであり、表紙掲載の許可をとっているかも確認のできない第三者は「著作権侵害ですので投稿を削除するべきです。」などと他者の行動を制限する権利を持ちません。
雑誌の中身については著作権利者である様々な出版社が再三権利侵害となる旨をツイートしていますので是非ご確認ください。お世話になっている出版社様を悲しませる人間への怒りをぶつける先として、後ほど通報方法について記載します。
【ご一読ください】雑誌やWEB版に掲載されている写真などを、撮影やスキャン等を行って許諾なくSNSなどで公開する行為が目立っております。
FINEBOYS (@FINEBOYS_JP)
これらの行為は著作権、肖像権等を侵害するものですので、ご注意願います。
みなさまが、純粋にFINEBOYSを愛してくださり、その上での行為もお見受けするので、 本当はあまり言いたくはないのです(とはいえ法律上、違反は違反なのですが)。 しかし、最近とくに目にする機会が多く、編集部としてはかなり悩ましい事態になっております。。。
片っ端から違反報告(訴訟を含め)することは、できれば編集部としても避けたいので、ご協力ください。 よろしくお願いいたします。
エゴサしては今週号のご感想にニコニコしていたら、誌面をスキャンして転載しまくる「配布垢」というものと出会ってしまいました。誌面の無断転載は著作権、肖像権侵害にあたります。
AERA (@AERAnetjp)
各投稿主さんには削除のお願いをしました。誌面にお力添えいただいた方、手に取ってくださる方に申し訳ないです。
公共の場所に掲示されているポスター等を撮影してSNSに載せる
表紙の問題と似ている問題ですがこちらも個別に考えます。
ポスター(著作物)を撮影してトリミングして、綺麗な画像としてSNSに載せるならば”複製権“”公衆送信権“の侵害となるかもしれません。
しかしポスターや看板を撮影する際、どのような本質が含まれるでしょうか。
景色等を含めたポスター撮影には”公共のその場所に掲示されていること“を撮影することが写真の本質と考えます。ポスターの画像を複製することに本質があるのではありません。表紙撮影と同様、罪に問われる可能性は低いと考えます。また広告の特性上たくさんの人に見られることを意図して制作されていますので、その広告が掲示されている景色の撮影が著作権者の利益を侵害するとは考えにくいでしょう。さらに掲示場所を添えるなら著作権者の利益を生み出すこともできるかもしれません。
どちらにしろ、罪に問うことができるのは著作権者のみであり、第三者は「著作権侵害ですので投稿を削除するべきです。」と他者の行動を制限する権利を持ちません。
注意点として、表紙にしろポスターにしろほとんどが問題ないとはいえ、公式発表前の物を撮影してSNSに載せてしまうと”公表権“の侵害になりますのでご注意ください。
撮影した写真を編集し、顔に落書きをしたり、傷を付けたりした画像を作成することは、著作者と、肖像権を持つアイドル自身の感情を傷つける物であり、悪質な同一性保持権の侵害となります。
その他、写真の中に意図しない著作物が映り込んでしまった場合については付随対象著作物の利用(写り込み) が当てはまり、権利侵害とはなりません。
アクリルスタンドを撮影してSNSに載せる
アクリルスタンドを撮影して画像を編集し、同じアクリルスタンドを勝手に製造してしまうなら悪質な”複製“となります。インターネットに載せてしまうなら”私的利用の複製“とはいえなくなるので、著作権法違反となるでしょう。
しかしそんな悪質なことを目的としてアクスタを撮影している人はほとんどいないことでしょう。アクスタの本質的な特徴とはなんでしょうか。
アクスタは持ち歩いて景色と共に撮影することに本質があると考えます。 景色に馴染みやすいようにベースが透明であることが多く、そこに立体的に存在することが本質であると考えます。
アクスタがその用途通り、景色と共に撮影してそれをSNS上で楽しむことが罪に問われる可能性はほとんどないでしょう。
公式に問い合わせるとこのような返事が返ってきます。
ご購入いただいているものであれば、所有権はお客様となり、お客様のご判断に委ねるものとなりますので、節度(モラルやマナー)を持ってご対応いただけたらと存じます。
アイランドストア
こちらも考慮した結果、上記の解釈で問題ないと考えます。
最初に考えた悪質な複製の件ですが、勝手に公式の画像で非公式グッズを制作し、さらに販売までする場合、著作権者の利益と感情の侵害となり、著作権法違反のど真ん中となることでしょう。他にも詳しく言及すれば侵害している権利はいくつもありますので、非公式グッズについて気になる方は”肖像権“や”パブリシティ権“でも調べてみてください。
歌詞を載せる・翻訳を載せる
歌詞も音楽の著作物として扱われます。
歌詞には作詞者に著作権があり、多くはJASRACに権利が信託されています。
詳しくはJASRACに記載されていますが、歌詞を記載するためには許可が必要であり、使用料を支払うことが求められます。歌詞を無許可で記載することは権利侵害となり許可されていません。
許可される形で用いるためには”引用“の条件を満たしている必要があります。歌詞の一部を記載して、歌割りを予想したり、感想を添えたりすることは引用の条件を満たしていると判断され問題とならないと思われます。
歌詞の意図を著しく損ない、著作者の感情を損なうほど酷い改変を行うようなことがあれば”同一性保持権“の侵害となる可能性があります。
以上のことは英語詞などの翻訳においてもあてはまります。翻訳は著作権者により許可された人のみが許されている権利です。ファンの間での翻訳により、歌詞の意図を著しく損なうなら”同一性保持権“の侵害となる可能性があります。勝手な翻訳であり、作詞家の意図を損なっている可能性があることを記載し、単語の直訳と意訳のどちらも記載し、意訳の意図の説明に務め”引用“とすることで大きな問題とならないよう配慮できるかもしれません。
どちらにしろ、罪に問うことができるのは著作権者、または著作権者から権利を任されているJASRACのみであり、第三者は「著作権侵害ですので投稿を削除するべきです。」と他者の行動を制限する権利を持ちません。
YouTubeのスクショを載せる
本サービスの利用には制限があり、以下の行為が禁止されています。
YouTube 利用規約
本サービスまたはコンテンツのいずれかの部分に対しても、アクセス、複製、ダウンロード、配信、送信、放送、展示、販売、ライセンス供与、改変、修正、またはその他の方法での使用を行うこと。ただし、(a)本サービスによって明示的に承認されている場合、または(b)YouTube および(適用される場合)各権利所持者が事前に書面で許可している場合を除きます。
YouTubeの動画ももちろん”著作物”です。ダウンロードやスクリーンショットは”複製“にあたります。
しかし”引用“の条件をクリアすれば全てが権利侵害ではありません。引用は画像にも適用することができます。
YouTubeで着用している服について論じたい場合、動画URLを貼るだけではどの服について話しているかがわかりづらく、その服がどれかが分かるスクショは資料として必要と言えるかもしれません。その場合必ず動画元のURLを記載し、元の画像に加工することなく、論じる内容の分量がある程度あり、資料を載せてまでも論じる必要性があるかが問われます。
このように細かい引用の条件を気にしたくない場合は、動画の秒数指定を活用するのも良いかもしれません。
動画のURLの末尾に【?t=秒数】を追加したリンクを貼ることによって指定した秒数の場所に誘導することができます。秒数は1h30m30sと、時間はh、分はm、秒はsで指定ができます。【?t=秒数】と言う単語を辞書登録しておくと便利です。
上記の動画は【https://youtu.be/wKBNbsYm5sI?t=6m54s】このようなアドレスで秒数指定しています。
深澤さんの二度目のミリオンいきたい発言いただきました。2nd楽しみですね!
追記 『KISSIN’ MY LIPS / Stories』発売から4週でミリオン達成しました!未だに過去最速達成です!
YouTube関連における権利侵害の判断材料としては、公式の動画再生数という利益を奪っていないか?ということを考えるとわかりやすいかもしれません。
規約でも分かるようにYouTubeに動画を上げている本人がスクショして載せていいですよ、と許可をしている場合があります。切り抜き動画を推奨していて公式に認可をうけて活動している切り抜きチャンネルも多数あります。現在Snow Manや所属事務所は許可をしていませんが、他の動画は他の動画内でのルールがありますので厳しく取り締まる必要はありません。
以上のことからスクショが載せられている!無断転載だ!と短絡的な判断をすることはできない、ということが言えます。どこからどこまでが権利侵害かを決めるのは著作権者です。権利を持つ事務所が投稿を削除するように求める動きがない限り、著作権者は現状を許容しているとも言えます。
以上のことを踏まえて、著作権者が問題としていないのだからスクショを載せます、と判断する人もいらっしゃるでしょうし、少しでも後ろめたく思いたくないので一切のスクショを載せません、と判断する人もいるかもしれません。どちらの判断も尊重されるべきと考えます。人がどう判断するかを見て、自分が影響されたい人だけをフォローすれば良いのです。自分と考えの違う人を見たくない場合はミュートやブロック機能などを使えば自分の視界に入れないようにすることができます。
著作権侵害として投稿の削除依頼ができるのは著作権者のみであり、第三者は削除依頼を送る権利がありません。第三者であるファンは権利者へ通報し、権利者から削除依頼をするよう促すことに努めます。権利者への通報方法などは後ほどまとめます。
YouTubeにも著作権について詳しく書かれているページがありますので興味のある方はこちらご覧ください。
X(旧Twitter)で公式動画をポストする
まずX(旧Twitter)に載せられている公式の動画(著作物)を保存することも”複製“に含まれます。保存するだけでしたら”私的利用“となり問題はありませんが、その保存した他者の著作物をSNSに投稿してしまうと”公衆送信権“の侵害となります。権利侵害とならないためにX(旧Twitter)の機能を活用することができます。
公式の機能のリポストには種類があります。公式ポストをそのまま自分のTLに並べる通常の”リポスト”と自分のコメントを添えることができる”引用”があります。もちろんどちらも権利侵害とはなりません。著作者の投稿を多くの人に共有することで、著作物へ与えられるべき利益と称賛を正しく返しているからです。
さらに、動画だけを引用する『動画をポストする』という機能も使うことができます。
iOS版アプリで行う場合
公式の動画のサムネイルをグッと押し込んで長タップすると、動画をポストする、という選択が現れます。そこからポストすると動画だけを引用することができます。
Android版アプリで行う場合
公式の動画の「共有ボタン」からURLをコピーします。ツイート画面でURLを貼り付け、「?s=数字」の部分を削除します。そして削除したところに、「/video/1」を付け足します。
このURLでポストすると、動画だけを引用することができます。
以上のポスト方法で動画を自分の端末に保存(複製)することなくツイートができます。また、ポスト後その動画の下には引用元のアカウント名が表示され、その再生回数は公式動画に還元されます。動画自体を編集することはできないので同一性も保持されます。
パッと見ると、端末に保存してから投稿している無断転載と呼ばれる行為との違いがわからないのでドキッとするかもしれませんが、動画の下に公式のアカウント名が表示されているかで確認してください。著作権に配慮された公式機能ですので安心して利用していただければと思います。
ただ元ツイートへリンクが作られるわけではないので、公式ツイートへの誘導ができません。再生数が反映されても、いいねやリポスト数が公式へ反映されるわけでもありません。普通のリポストと併用するのも良いかもしれません。
その他、基本編では以下の例についても取り上げています。
権利侵害の可能性がある行為
許可されている行為
繰り返しになりますが、それぞれの状況に上記にあげた権利を当てはめることが正しいかどうかは、訴えられて初めて議論されるものであり、自分が法律を元に判断したことを第三者が撤回するよう強く求める権利はありません。自分の決定を下すために知識を用いていただき、他者がしっかり法律を考慮して決めたならばその決定を尊重するべきであると思います。
しかし、有料の動画が転載されていることで公式の利益に損失が出ていると感じたり、さらには動画の配布に金銭を要求したりと悪質な転載行為が行われ続けるならば著作権者へ通報して対処するよう求めることもできます。以下はそれぞれの通報方法について記載します。
違反者を著作権者に報告する
ファンはあくまで第三者であり、著作権を保持している本人ではないので権利侵害の投稿を削除するよう要請する権利がありません。では著作権を侵害している投稿を見た場合に唯一できる”権利者へ通報する方法“を以下にまとめますので参考にしてください。
ファンクラブに報告する
自分がFC会員であれば事務所へ直接報告することができます。メールでの報告は画像の添付はできず違反投稿のURLを送ることになります。しかしURLを送っただけでは投稿が削除されたり鍵がかかってしまって何も見れなくなってしまうかもしれません。その場合は投稿画像をPDF保存し、印刷した上で事務所に郵送することもできます。そうするなら法的措置をする時にも資料として問題なく使用することができます。
X(旧Twitter)であればURLを入力すると自動で画像化してくれるサービスがありますのでこちらを利用するのも良いかもしれません。Xにサービス名が変更されましたので、画像保存したい対象ポストのアドレスの”x.com”の部分を”twitter.com”に手打ちで変更する必要があります。
著作権違反以外に、あまりにも酷い誹謗中傷も上記と同じ手順で報告することが可能です。
レーベルに報告する
CDや映像作品など、レーベルが管理する楽曲や映像コンテンツの権利侵害はこちらへ報告することもできます。
配信元に報告する
冠番組である『それSnow Manにやらせてください』はU-NEXTで配信しています。違法な投稿のURLをこちらのフォームで報告することにより対応してくださるかもしれません。他の配信に関しても配信元の問い合わせページから報告することができます。
専門サイトに報告する
テレビ番組の権利侵害の報告先はこちら。
サイト内で著作権について丁寧に説明されています。
有料の映像作品の動画の報告先はこちら。
SNSへ報告する
X(旧Twitter)での報告先はこちら。
しかし基本は著作権者からの通報しか受け付けていません。
Instagramでは権利侵害を報告できるのは著作者のみであり、第三者は著作者に報告するよう勧められています。
YouTubeでの報告先はこちら。
報告することで違法投稿が削除される助けになるのももちろんですが、自分の応援する推しの権利を侵害をする人間への、怒りの気持ちを昇華する方法としても通報方法を知っておくというのは大事なことです。
少しでも違法行為が減ることを願っています。
参考にした資料
今回の執筆にあたり参考にしたサイトを載せておきますので興味のある方は参考にしてみてください。
最後に
こちらまで長々と読んでくださりありがとうございました。こちらのブログはもちろん共有していただいて構いません。長いブログですので、該当箇所をスクショして載せることも問題ありません。その場合は引用条件を考慮していただき、こちらのブログのURLの記載をお願いいたします。
自分もまだまだ勉強中ですので理解が深まり解釈が変わればその都度追記、変更させていただきますのでご了承ください。
また、この度”推しを応援するためにSNSを利用する”ことに付随した権利についてのみ述べており、記載した以外の権利も多数存在しています。読みやすさを重視して省略してしまった部分もありますのでご了承ください。
なんとなくダメな気がする…、といった曖昧な判断をしっかりとした知識で補強するならば、行動の選択がしやすくなるでしょう。真面目な方々がこれは権利侵害なのでは…と怯えて行動が過度に規制されないことを願っています。
また相手が権利を侵害する人であったとしても他者への強い言葉は自分に呪いのように返ってきます。間違えずに生きていくことなど誰にもできません。たくさんの人が正しい知識によってできるだけ優しくあるように願います。
どうかたくさんの人が楽しく、のびのびと、推しを応援できる毎日でありますように。